業務可視化は、現状把握、課題抽出、改善、スキルアップが目的です
業務可視化の目的を教えてください
業務可視化の目的は、大きくとらえると、仕事を管理し、人材を育成していくためのシステムを作ることと私は考えています。
仕事を管理することについては、仕事の管理できていますか?でもお話しさせて頂いていますので、ここでは、詳細には触れません。
業務可視化の目的を達成するステップは大きく4つになります。
業務可視化は仕事を管理し、人を育てていくシステムですが
そのスタートは現状把握です。
ステップ1:現状を把握する
先ず、対象となる業務を洗い出すことから始めます。
今回は、給与支給業務を例にしたいと思います。
会社の規模によって、考え方によって給与支給業務は、総務、経理、人事、管理など様々な職制に属すると思います。
規模が大きな会社では、管理部から発展し、経理部、財務部、総務部、企画室、人事部といった組織になっていると思います。今回は管理部に、経理課と総務課があり、総務課が給与支給業務を担当しているというイメージです。
従業員数が100人くらいの会社ですね。
そうですね、割と小規模の会社を想定してください。総務課所属員が課長も含めて4人くらいでしょうか。
通常、給与支給業務というと、大まかな括りを考えると月次給与支給業務と賞与支給業務及び年末調整業務くらいが頭に浮かびます。また、給与支給業務に直接は入りませんが、総務課で行う関連業務としては、社会保険、住民税、源泉所得税などの給与支給に直接関連する業務や退職金制度がある会社では退職金支払い業務、採用業務、社員研修なんかも想定できます。
それでは、そういった業務を洗い出すことになるんですね。
月次給与、賞与、年末調整で3業務なら簡単そうですね
あはは、頼もしいですね。
確かに、給与支給業務を大まかに分類すると、大体3業務くらいだと想定してみましたが、この状態では、対象業務の分類が大きすぎて、細分化して把握する必要があります。
業務棚卸・整理表の作成
細分化といいましたが、担当者にやっている仕事を書き出してもらうことになります。
業務棚卸・整理表を使って作成します。
自分の担当する仕事を書き出してみました。
この業務棚卸、整理表をもとに、さらに、処理レベルでこれ以上細かくすると単なる動作になってしうまうというレベルまで業務の棚卸を実施します。
上記に記入された「給与計算支給情報登録・変更の確認」という内容は、二つの処理を含んでいます。
登録処理と変更確認処理です。
- 給与計算支給情報登録処理
- 給与計算支給情報変更確認処理
の2つに区分できます。
更に、確認作業は登録処理をする場合にも必要な作業ですから、
- 給与計算支給情報登録処理
- 給与計算支給情報登録確認処理
- 給与計算支給情報変更処理
- 給与計算支給情報変更確認処理
の4つに区分できるかもしれません。
なんだか、どんどん増えてきましたね
この4つの処理ですが、私の経験上、処理手順を考えると1処理に4から5くらいの作業(動作の集まり)に細分されそうです。
多分、20以上の作業になりそうです。
次に業務棚卸、整理表から業務体系案を作成します。
業務体系案の作成
業務体系案の作成のイメージです。
確認処理は処理レベルではなく、作業レベルでした。また、変動項目処理が抜けていたので追加しています。
業務体系は4階層で分類します。
分類区分は、このサンプルでは
- 機能名(課・担当)
- 業務名
- 処理名
- 作業名
としていますが、会社の実態に合わせて、分類名を変えたり3階層とする場合もありますが、経験的に4階層で区分すると整理しやすいと思います。
業務体系案?案てどういうことでしょうか?
この段階では、まだ案なんです。最終的に業務体系として確定するのは、この後、仕事を可視化して、業務の流れや作業の工程を確認して、足らない作業や、重複している作業を整理して、最終的に、業務体系が確定します。
経験的に言えば、大体、案の1.5倍くらいの作業数になると思います。
作業の実施手順(ステップ)を検討する
業務体系案の作業レベルの実施手順を検討します。この検討シートをもとに、業務を可視化していきますが、ここでは、それほど、厳密に記述しなくても構いません。
サンプルで作成している内容は、書きなれていないとなかなか難しいと思います。実施する内容が大体わかる程度で結構です。この作業を言葉ではなく、作業チャートに書き表すための検討シートという位置づけです。
ここまでくると、そのままマニュアルとして使えそうですね。
ただ、結構大変そうですね。まだステップ1「現状把握」ですもんね。
マニュアルとしては、もう少し工夫する必要はありますね。
それと、まだステップ1の「現状把握」段階ですが、実は業務可視化は「現状把握」のこの「作業の実施手順の検討」段階で7割くらいです。
後もう少しですから、頑張ってください。
はい、わかりました…でも大変そう^^;
作業チャートの作成
日本では産能大式事務工程分析図表(産能大式フローチャート)、プロセスチャート(日本能率協会式フローチャート)が有名です。
今まで文字で表現してきたものを図(意味のある記号)で表現する、可視化することで、誰でも理解できる状態になります。
私は、主としてプロセスチャートを勉強しました。
その考え方や手法は有用です、特にプロセスチャートは、業務の流れを上から下に縦に表現し作成します。これが大切だと私は思っています。
ただ、日本能率協会のプロセスチャート表記法は、記号が多いのが私にはイマイチでした。
ふーん、papioさんって40年以上前に20代だったのね。
サイト運営者を読んでくださいね、つららさん!
作業チャートで使用する記号
チャートを作成するにあたって、用いる記号の規則があります。パピオコンサルタントが使用する記号は全部で10種類です。
この記号を使って、作業ステップ検討シートを参考にしながら、作業チャートを作成します。
作業チャート作成サンプル
このチャートは、基本形です、このチャートに各ステップごとの作業時間や必要なスキル、知識等加えたり、処理の流れを可視化するフローチャートも作成検討しながら現状把握を進めます。
この作業チャートを作成して
終わりってわけじゃないんですね。
そうですね。最小仕事単位の作業チャートだけでは、作業の流れややり方はより理解できるようになりますが、次以降のステップに繋げるには
情報がたりませんね。
作業チャートの作成からスタートして、課題抽出、改善を実施し、最終的に完成した作業手順書のイメージです。
左から、作業チャート、作業ステップ、備考として作業を進める際の注意点、使用するPC画面や帳票などについても、細かく記述されています。また、上部の赤丸部分には、この作業の頻度(実施回数)、実施時期、作業時間も記載されています。
月間180件 作業時間が5分ですから、900分で、15時間。年間でこの作業に180時間くらいかかっているということになりますね。
作業チャートに作業時間を加えるわけですね。
ステップ1の段階で、この例のようにマニュアルに近い記述も必要なんでしょうか
この段階で、サンプルのような作業手順書を作成することはありません。何故なら、現状の作業には改善すべき点があるかもしれませんし、あまり詳細に作成してもムダになってしまうこともあるからです。
但し、現状の作業時間の把握は必須です。
作成した作業チャートに、作業時間(頻度、実施時期、作業時間)を記載します。
次のステップで、課題を抽出することになります。
ステップ2:課題(非効率、リスク等)を抽出する
作業チャートをもとに、作業を検討し課題を抽出します。
ただし、一つ一つのチャートを検討しても、全体の流れが見えないと課題は見えてきません。
そこで、作業チャートを整理します。
例えば、作業チャートを流れで整理します。
あれ?採用時の情報登録と身上異動時の情報登録は結局は同じ作業ですね。それに給与ノートって備忘録みたいなものなんですね
そうなんです。頭では違う仕事って認識していても、作業自体は同じだったり、同じ情報を色んなところに記録しているなんてことも多いんです。一元化し処理することで改善できたり、作業そのものを止めることも出来ると思います。
仕事を見直すときに、初めに考えなければならないことは、「やめられないか」ということです。
自分の担当している仕事は、当たり前に実施しているので、意味を考えることは少ないと思いますが、実は、その作業、仕事自体が何のためにやっているのかと掘り下げて考えることが大事です。
詳細なマニュアルを整備したり、改善する前に仕事、作業そのものの目的が曖昧ならばやめることを考えることが重要です。
意味のない、やめられる仕事、作業を改善することは、ムダです。
もちろん、自分の担当の中では、意味がなくても次工程では意味があるのかもしれませんから、そこは、十分検討する必要があります。
ステップ3:必要であれば見直し、改善する
うーん、必要であればって、どういう意味ですか?
うーん、必要なければ改善することはないですよね。
ステップ2でも言った通り、元々必要のない業務って言いすぎですけど、その仕事って何のためにやってるんですか?ってお伺いしたときに、答えられないような仕事は止めた方がいいですよね。
でも、ずーっとやってきたんですよね、長い間?
そうですよね、でも、長年続けてきた仕事って、習慣でやってるだけで、今となっては、その仕事を始めた人もいなくなって…目的がわからなくなっているってことも案外多いんですよ。
だから、業務目的ってとても重要なんです。
改善については、ここでは深く触れません。
改善効果が一番大きいのは、止められないかという観点で見直して、止めてしまうことです。
ステップ4:スキルアップ(人材育成)につなげる。
業務を可視化すると、仕事の手順、知識、スキル、時間などが明確になってきます。
仕事のやりかたが可視化されるわけですから、誰でもできる状態になるわけです。
誰でもできるといっても、知識や
スキル、あるいは資格などが必要な
こともありますよね。
そうですね、誰でもできる状態になっていますが、
その仕事をやるためには必要な資格や知識、スキルは求められますね。
業務可視化によって、仕事に必要な資格、知識、スキル、頻度などが明確になっていることで、その仕事を割り当てる人材像が描けるようになります。
実在の人材と、仕事を割り当てる人材像とを比較して、足りない点があれば、計画的に指導や教育を実施できる状態になります。
また、仕事のステップアップを目指す、担当者にとっても、必要とされる資格、知識などが明確になっていますので、自分に何が足りていて、何が不足しているのかが明確になり、努力目標が明確になります。
このように、業務可視化は、業務効率や品質向上に効果があり、最終的には、人材育成につながり、大きな効果を生み出す優れた経営手法の一つと私は考えています。